北京大学医学部ブログ

第9話 僕が感じたイチからの中国語

学生ブログ
こんにちは!北京に行くまでに一か月を切ったこの頃、ふと目に映る景色ひとつひとつが一期一会のような・・・そんな気持ちで最後の日本を目に焼き付けています。最後の日本をじっくり味わいたいです。


△ISIからのいつもの風景


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△前回「第8話 順天堂医院見学」

▽次回「第10話 さよなら、日本!」
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1.イントロダクション


さて、先日ご縁があり、クローバー美容クリニックにて施設の見学、そして院長先生に麻酔のレクチャーをしていただきました。この場をお借りして、改めて感謝を申し上げます。

今まで手術を受けたことのない僕は、麻酔に対して「本当に効くのかな?」と失礼ながら恐怖感を覚えていました。しかし、今回のレクチャーを通して、麻酔とはいかに繊細な仕事なのかということをよく理解することができました。例えば、全身麻酔の定義として、4つの条件を満たす必要があります。
① 意識消失
② 鎮痛
③ 筋弛緩
④ 反射抑制

これを上手にコントロールするためには、薬剤の量のみならず、他の数値や患者さんの健康状況などにも気を配らなければいけません。例えば①~④のうち、②だけが不完全だった(鎮痛のみが効いていない)場合、患者さんは腹部を切られても、声を上げて自身の痛みを主張することができないのです。極端な言い方をすれば、拷問のような状況になってしまいます。実際にそういった過失を巡る裁判が行われたこともあったそうです。レクチャーをしてくださった先生は、「麻酔科医は縁の下の力持ち」と表現されていました。

また先生は、医療ツーリズムを見据えて、中国人患者の受け入れ、また中国人患者の受け入れ、また中国での技術指導も豊富で、これから中国で医学を修める身として、大変勉強になりました。本当に、ありがとうございました!

◎クローバー美容クリニック
http://www.ashiya-i-clinic.com/campaign/index2.html



2.中国語で医学を学ぶということ


 
さて、いきなりですが、皆さんは中国語ができますか?

「全く勉強したこともないし、難しそうだ」

北京大学への進学を決める前の僕はそう考えていました。町を歩けばあちこちで文字通り毎日、耳にする中国語。でも聞き取れるのは、せいぜい「谢谢!(シエシエ!)」くらい。そんな中国語で、しかも医学を修めるなんて・・・。ハードワーク、なんて欲張りな話だ、と思っていました。しかし、一歩日本の外に目を向けてみると、世界中の多くの学生がセカンド・ランゲージで専門分野を学んでいることに気付かされます。

ある医学生の友人は言いました。
「母国語で医学を学べる国のほうが少ないよ」

こうして、国内外の多くの学生を見ていく中で、 “外国語で医学を学ぶ”ということに対する僕の違和感(抵抗)は薄れていきました。同時に、自分が選べる大学の選択肢が大きく広がり、北京大学への進学を決定。一番の不安要素だったHSKも無事入学前に5級(最高級は6級)の取得を達成することができました。ちなみに、北京大学医学部に進学するほとんどの学生が5級を、中には6級までパスした学生もいます。


① ゼロじゃない、イチだ

 突然ですが、質問です!



皆さんはこの3文字を読むことができますか?

・・・そう、正解は「はくないしょう」、そして「バイネイジャン(中国語読み)」。つまり、ここで主張したいのは、日本語と中国語の類似性です。
中国語を学ぶにあたって、常に感じることは一つです。「ゼロじゃない、イチだ」。つまり、僕たちは、日本語を習得する過程ですでに中国語の基礎(=イチ)も学んでいるという捉え方ができます。
 その大きな要因となっているものが、漢字です。たしかに、中国と日本のすべての漢字が完全に一致しているわけではありません。事実、似て非なるものです。しかし、それでもアメリカ人やイギリス人が学ぶより、中国語は日本人にとって最も取り組みやすい外国語のひとつなのではないでしょうか。スタートから他の外国人より、一歩も十歩もリードしている、そんな気がします。


② 中国語は表語文字



 表語文字とは、一つ一つの文字が意味を持つ文字体系のことです。

例えば、「医」という文字を見て、皆さんは何を想像されますか?

僕は、この文字を見るのとほぼ同時に、医院や医師など医療にまつわるイメージが頭の中に自然と浮かんできます。これを表語文字といい、中国語とはまさにその連続の言語なのです。
日本語であれば、漢字のほかに“ひらがな”や“カタカナ”があります。これらは一つ一つの文字が意味を持たないため、表音文字という文字体系に分類されます。
たとえば「い」のみでは意味を持ちませんが、「いがく」というふうに文字を組み合わせると、一つの意味を持たせることができます。英語も同様で、単体では意味を持たないアルファベットの組み合わせでようやく一つの意味を得ます。


③ HSK(中国語検定試験)
 
 中国には、HSK(Hànyǔ Shuǐpíng Kǎoshì)と言われる中国政府公認の中国語検定試験があります。中国語版TOEFLだと思っていただいて構いません。外国人が中国の大学に入学する場合には、この試験の各大学が指定する級に合格する必要があります。

北京大学医学部の場合、予科は4級、本科は5級に合格することが求められます。数字が大きくなるほど高級になりますので、いくら漢字になじみのある日本人といえども、5級には本腰を入れて勉強しないと合格できません。

 とはいえ、1992年から日本でもおおよそ月に一度のペースで行われている試験ですから、傾向と対策は容易に得ることができます。

 例えば、HSK5級の最後には、「写真を見て80字程度の作文をしてください」という問題が出ます。


写真は、毎回このようなシンプルなもので、人物が登場することが多い傾向にあります。

 そこで僕は、北京国际青年研修学院的我的乌兹别克斯坦同学叫玛丽(24字、訳:北京国際青年研修学院の私のウズベキスタンの同級生のマリー)という主語をあらかじめ覚えてから試験に挑みました。つまり、試験中は、80-24=56文字のみ考えるだけで済むということになります。

 検定試験ですから、どんなに作文の内容が素晴らしかろうと、文法や語法などにミスがあれば無慈悲に減点されます。事前に準備できる部分はしてしまったほうが安全、加えて時間の節約にもなると考え、このような対策をとることにしました。ぜひ皆さんも使ってみてください。ちなみに、ウズベキスタンより、アラブ首長国連邦のほうが中文での字数が多いのですが、ふつう彼らはカンドゥーラやアバヤを着ますから、あまりおすすめしません。


④ 総論

 目標を「留学する上で大学から要求される中国語力」とした場合、ISIの授業のみで十分だと感じました。僕自身、授業の復習のみしか行っていないからです。悲しいかな、高かった単語帳も一度も使いませんでした。
そんな素晴らしい授業をしてくださったISIの先生方、そして復習の手伝いをしてくれた友人方には本当に感謝してやみません。本当にありがとうございました。



3.終わりに
 
 今回は、日本人にとっての中国語の学びやすさについてお話してきました。しかし、類似による紛らわしさもあります。たとえば、個人差はありますが、中国語のノートに日本語でメモを取った際に、すこし見づらいなと感じることが度々ありました。
あまり色ペンを使わないぼくは、どうしようかと少し悩んだのちに、英語で書くことにしました。というのも、好きなものを使って新しいものを学べば、多少やる気のない日でもモチベーションを保てると思ったからです。
結果的にこれが功を奏し、今日まで継続することができました。医学部は卒業までの道のりが長いですから、これからも日々の勉強をしていく上で、このまま安定したモチベーションを保っていくことも大切だと、勉強になりました。



さて、いよいよ、もうすぐ北京。もちろん期待に胸を躍らせる部分もありますが、どちらかといえば、いまは少し寂しいような気持ちです。期末試験やインターンなどなど、目の前には予定の山がそびえ立っていますが、立つ鳥らしく、少しずつ後片付けを始めていきたいと思います。それではまた次回もよろしくお願いいたします。